9月から開始した、新サービス 個人向け心理カウンセリングについて、
そのサービスを始めるに当たっての思いや背景についてお伝えしていきます。
うつ増加は国力減退の危機
2015年の3月に21世紀医療フォーラム「うつ病リワーク推進協議会」
メンタルヘルスシンポジウムに出席したときのことです。
うつ病の現状を聴いて、心理支援職者の一人として、
そして、うつ病から立ち直った経験者として、
「この状況をなんとかしなければ…」という強い思いを持ちました。
私は2002年に気分障害で半年間通院し治療を受け、
そこから立ち直れた経験があります。
私は、重篤化する手前の軽うつ状態の段階で、
専門家に相談に行ったおかげで、
休職しなければならないほどの重症のうつ病にならずに済みました。
しかし当時は、
会社に自分が精神科に通院していることや
薬を飲んでいることが知れたら、
「自分のキャリア(当時課長職でした)は終わりだ」、と思い、
ひたすら隠し、会社では普通に振舞っていました。
当時は、うつ病に対する社会的な認知も今ほどありませんでしたから、
自分ではとにかく人に知られずに治療するしか方法がなかったのです。
うつ病と診断される人が1990年代後半から急増しています。
90年台以前は40−50代の責任ある立場の重症患者が多く見られたそうですが、
90年台以降は、若年層にも広がり、
軽うつ症状(どうにか働けるが、本来の力が出せない気分障害)
を訴える人が増えてきています。
厚生労働省の調査による気分障害患者数の推移は以下の通りです。
(厚生労働省HP精神疾患のデータより当社作図)

*2011年は若干減少しましたが、震災により宮城県一部と福島県を除いた調査に基づくデータを使用しているためです。
今、日本の人口は減り始めています。
そして今後は働く人も減っていくということです。
一方で、足元を見ると本来社会に貢献できる実力を持っているのに、
気分障害で本来のパフォーマンスが出せない人は増えている。。。
現在は企業内のメンタルヘルス管理の問題として捉えられることの多いこの状況も、
将来的な視点で考えると、日本の国力に影響する問題です。
3月のシンポジウムに出ていたときに、
これは大変な問題だ、という思いを強く持ちました。
そして、更に治療の現場の話を聴いて愕然としたのです。
気分障害を訴える人の増加の一方、
精神科医の数はその増加に対して不足していて、
1日に30−50人もの患者の診断を行わねばならなかったり、
新規の患者が今すぐなんとかして欲しいとカウンセリングを望んでも、
予約が取れるまでにずいぶん待たなければならないと聞きます。
また、このため多くの精神科を始めとする医院では
一人のカウンセリングを5−10分程度で終えないと
診療希望する人の治療がこなせない状況になっているそうです。
私がうつ病治療で通院していたときは、
予約の電話から「すぐ来てください、いつ来られますか?」と
翌日に診てもらうことが出来ました。
カウンセリングの時間は毎回15分と短かったですが、
2週間に1度、心療内科の先生に話を聴いてもらって
心が楽になるのを実感することができました。
あのプロセスが5分しかなかったら、どうなるのか?というのは、
実際に体験していませんから、評価出来ませんが、
休憩も取らずに一日30人から50人と面談しなければならないとしたら、
精神科の先生方のメンタルヘルスが心配になります。
当社がカウンセリングを行う場合は、最低でも50分、
リワークの支援等の場合は、2時間を超える面談を行うこともあります。
じっくりと話を聴いてもらい、心の内にあるものを言葉として吐き出し、
自分の内面にあるものを頭から取り出してカウンセラーと一緒に整理していくには、
ある程度の時間が必要です。
この状況を
当社がカウンセリングを利用しやすい仕組みを作り、
広く場を提供することによって改善したいと考えました。
そして、より多くの人が
自分の仕事に自信と誇りを取り戻し
再び活き活きと働けるようになってほしい。
これが、当社が個人向けカウンセリングサービスを始める最大の理由です。
(続く)